タイスイソウ:
地下水が蓄えられている地層。
通常は、粘土などの不透水層(水が流れにくい地層)にはさまれた、砂や礫(れき)からなる多孔質浸透性の地層をさす。実際には、この帯水層が何層にも重なっている場合もある。
この地層では、地下水が比較的速い流速で流れるので、大量の地下水をくみ上げることができる。一方で、帯水層中の水の移動だけでは水の補給が間に合わないほど急激に地下水を揚水すると、帯水層を取り囲むシルト層や粘土層などの不透水層(制限層)中の地下水が絞り出されて制限層が収縮し、地盤沈下が発生する。
自然的・人為的な要因により、地表面が広い範囲にわたって徐々に沈んでいく現象。自然的要因とは地震による地殻変動などを指すが、環境保全上問題となるのは、地下水の大量揚水や鉱物資源の採取などによる人為的要因による地盤沈下である。また、トンネル工事や農地排水など、土木開発や農地開発が原因となることもある。
環境基本法(1993)による公害の定義では、「事業活動その他人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる…地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)…」とされている。
地盤沈下が起きると、いわゆる「海抜ゼロメートル地帯」が生じたり、地表面と河川等との高低差がなくなり、排水が悪くなることによる冠水や、また道路や建物などの建造物が物理的に歪みや破壊を受けるなどの障害が発生し、社会的に大きな被害が発生する。
沈下の防止対策としては、地下水の汲み上げの禁止(ビル用水法、工業用水法、地方条例などによる)のほか、使用後の水や天然ガス採取後の地下水を元の滞水層に戻す地下水人工涵養などがある。ひとたび生じた沈下を回復させることは困難で、堤防のかさ上げ、損傷個所の補修といった対症療法しかない。
現在では、各種の規制措置の効果が出て、沈下現象は全国的に沈静化してきている。しかし過去からの累積の沈下によるゼロメートル地域は、関東平野134km2、新潟平野208km2、濃尾平野374km2、大阪平野71km2、筑後・佐賀平野207km2となっている。